毛髪補修剤

毛髪の構造

毛髪は、外層のキューティクル、内部のコルテックス、毛髪の芯にあたる毛髄質から構成されています。

Fig 1. Hair structure1)

外層のキューティクルは、複数の繰り返し層構造であり、キューティクルの最表面には、脂肪酸である18-メチルエイコサン酸(18-MEA)が配列しています。この脂肪酸層はF-layerと呼ばれています。F-layerが存在することで、毛髪表面は疎水性を示します。また、F-layerは毛髪を触ったときの滑らかな感じといった感触にも寄与しています。

Fig 2. F-layer2)

ダメージ毛とコンディショナー

毛髪は、洗髪やブラッシング、ヘアドライヤーなどの日常生活における行動や、紫外線、ヘアカラーリングによってダメージを受けます。3)
毛髪はダメージを受けると、パサつきやきしみ感といった感触の悪化、ハリ・コシの低下や、切れ毛などが生じます。この時、毛髪表面のF-layerは損傷し、下部の層が露出した状態になります。
また、キューティクルは剥がれ落ち、乱れた状態になり、これらの状態変化が、ダメージ実感につながっています。

Fig 3. Condition of the cuticle, via SEM.

一般的に使用されているコンディショニング剤は主にカチオン性界面活性剤が使用されています。カチオン性界面活性剤は、ダメージを受けた毛髪表面のアニオン性を示す箇所とイオン結合し、毛髪へ吸着しますが、アニオン性を示さない部分には選択的に吸着することは難しいと考えられます。そのため、カチオン性界面活性剤のみでは、ダメージを受けた毛髪へのコンディショニング効果は充分でないといえます。

Fig 4. State of hair surface.

レオガードDGGとは

レオガードDGGはジグルコシル没食子酸です。レオガードDGGの構造は、ポリフェノール類である没食子酸と、グルコースから構成されています。レオガードDGGは、複数のOH基を有することで、毛髪表面に吸着し、更にカルボニル基を有することで、カチオン性界面活性剤とイオン結合をし、スペーサーの役割を担います。
レオガードDGGはその構造から毛髪へ作用することで、ダメージを受けた毛髪に対し、以下の3つの効果を示します。

①毛髪表面の疎水性向上効果
②強度向上効果
③弾性向上効果

Fig 5. Structure of LEOGARD DGG ( diglucosyl gallic acid ) .

毛髪表面の疎水性向上効果

未処理のダメージ毛、ダメージ毛に、カチオン性界面活性剤であるLQT800のみ処理した毛髪、レオガードDGG+LQT800を処理した毛髪に対する水の接触角を測定しました。
疎水性の低いダメージ毛に対し、LQT800を処理したダメージ毛の接触角の値はわずかに向上しましたが、DGG+LQT800を処理したダメージ毛は、最も高い値を示し、疎水性が向上していました。

※ LQT800 ( リポカードT-800 ) : ステアリルトリモニウムクロリド

Fig 6. Contact angle of water on damaged hair.
Bars express means±S.D. (n=10).
**p<0.01 vs. DGA+STAC (t-test).

強度向上効果

引張試験機を用いて、毛髪が破断した際の最大強度を引張強度として測定しました。ダメージ毛は、ダメージを受けていない毛髪よりも強度が低くなりました。LQT800のみ処理したダメージ毛の強度は、ダメージ毛のみの値と変化がありませんでした。DGG+LQT800を処理したダメージ毛の強度は、ダメージ毛及びLQT800を処理したダメージ毛の強度よりも高く、未ダメージ毛と同等の値を示しました。

Fig 7. Tensile strength.
Bars express means±S.D. (n=10) .
**p<0.01, n.s.: not significant vs. DGA+STAC (t-test).

弾性向上効果

平衡繊維法4)を用いて毛髪の曲げ弾性率を算出しました。ダメージを受けていない毛髪の曲げ弾性率と比べ、ダメージ毛の曲げ弾性率は大きく低下しました。ダメージ毛にLQT800のみ処理した毛髪の曲げ弾性率は、ダメージ毛と同等の値を示しました。DGG+LQT800を処理した毛髪の曲げ弾性率は、最も高く、ダメージを受けていない毛髪と同等の値を示しました。

Fig 8. Bend elastic constant.
Bars express means±S.D. (n=10).
**p<0.01, n.s.: not significant vs. DGA+STAC (t-test)

レオガードDGGとLQT800の毛髪への作用解析と作用メカニズム5)

毛髪表面におけるLQT800の作用状態を飛行型2次イオン質量分析法 ( ToF-SIMS ) を用いて解析しました。強度が高いほど、毛髪への吸着量が高いことを示しています。LQT800のみ処理したダメージ毛表面は、LQT800が不均一に作用し、その検出強度は低いことが分かりました。一方で、DGG+LQT800を処理したダメージ毛表面は、LQT800が全体に均一に作用し、その検出強度が高いことが分かりました。

Fig 9. Adsorption state of LQT800 on damaged hair surface, via ToF-SIMS.
Bar scales: 30 μ m.

レオガードDGG はその構造中にグルコシル基由来のOH 基を多く有することでダメージを受けた毛髪表面に露出する毛髪タンパクと多重水素結合を形成することで吸着すると考えられます。また,DGA 構造中の没食子酸に由来するカルボキシ基が酸解離することでアニオン性を示し、カチオン性界面活性剤であるLQT-800とイオンコンプレックスを形成することでレオガードDGG はLQT800 の毛髪への作用量を増加させたと考えられます。よって、毛髪表面の疎水性が大きく向上したと考えられます。

Fig 10. Mechanism of hydrophobicity improvement.

更に毛髪断面におけるLQT800の作用解析をToF-SIMSを用いて行いました。LQT800は毛髪表面だけでなく、その下部のキューティクル層全体へ作用していることが明らかとなりました。また、LQT800のみ処理したダメージ毛と比べ、レオガードDGG+LQT-800を処理したダメージ毛のLQT800の検出強度は高いことが分かりました。レオガードDGGは、毛髪表面だけでなく毛髪断面においてもLQT800の作用量を増加させていることが明らかとなりました。

Bar scales: 5 μ m.

また、未ダメージ毛、ダメージ毛、LQT800を処理したダメージ毛、レオガードDGG+LQT800を処理したダメージ毛を走査型電子顕微鏡 (SEM) を用いて観察をしました。ダメージ毛のキューティクルは、欠落や剥離した様子が観察されました。LQT800を処理したダメージ毛のキューティクルは、ダメージ毛に比べキューティクルが残っていますが、一部剥離した様子が観察されました。レオガードDGG+LQT800を処理したダメージ毛は、キューティクル残存部においては、キューティクル先端部分の剥離は見られず、綺麗に整っている様子が観察されました。

Fig 12. Condition of the cuticle, via SEM.

以上の作用解析から、レオガードDGGは、LQT-800が作用できない部位に作用し、スペーサーとなることで毛髪表面のLQT-800の作用量を増加させ、毛髪表面の疎水性が大きく向上したと考えられます。また、キューティクル層全体にはLQT-800が多く作用し、キューティクル表面にも多く作用することでキューティクル全体が整い、強度や曲げ弾性といった力学的物性が向上したと推察されます。
よって、レオガードDGGを使用することで、毛髪の触感、切れ毛・枝毛の抑制、ハリ・コシの向上が期待されます。

参考文献

1) 大門一夫,毛髪科学入門,理美容教育出版(1973)
2) A.P.Negri, Textile Res. J., 63(2), 109 (1993)
3) 西田勇一,細川 稔,伊藤武利,青野 恵,フレグランスジャーナル,30(8),33-41(2002)
4) G.V.Scott、C.R.Robins、A convenient method for measureing fiber stiffness、textil.res.j 、39、975-976 (1969)
5) 増田有紗, 今田浩, 石黒正雄, 戸堀悦雄, J. Soc. Cosmet. Chem. Jpn. 54(4): 358-363