セメント分散技術

セメント用分散技術について

分散剤の機能と役割

セメントのような無機粉末は、水中で機械的に激しく撹拌すると一時的に各々粒子に分散します。しかし、極めて短時間のうちに数個あるいは数十個が互いに集合して、粒子が凝集体を形成します(図-1参照下さい)。
粒子が凝集体を形成した系は、一般的に流動性がなくなります。この現象は、粒子がばらばらに存在しているよりも、粒子どうしが集まった状態でいるほうが安定(分散力 < 凝集力)であるため起こる現象です。このような粒子の集まろうとする力を抑制し、水中で粒子が個々に分散している状態を保ち続けることを助けるものが分散剤です。

図-1.分散工程と粒子の分散状態

一般に分散剤は水溶性高分子として総称されるものであります。分散剤がその機能を発揮するためには、分散させたいものへ水溶性高分子を吸着させなければなりません。分散剤として用いられる水溶性高分子の多くは、分散させたい粒子に対して吸着する部分(疎水部)と、逆に水層へ広がろうとする部分(親水部)の両方を1分子中に持っています。吸着現象はこの疎水部と粒子との間にはたらく力の強さに大きく影響を受けることになります。たとえば、セメント粒子は一度水と接触するとその表面状態は時間とともに変化することから、セメント表面の変化を考慮した分散剤の設計が必要となります。対象粒子に吸着した水溶性高分子は以下の2つの方法(図-2参照下さい)により粒子どうしの集まろうとする力を抑制します。

  1. 個々の粒子表面に帯電層を形成し、その静電気的な反発力により分散させる。
  2. 個々の粒子表面に林立した吸着層を形成し、その立体反発効果により分散させる。

(1) による分散方法は古くから知られており、コンクリート分散剤に於いてもメラミンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸などがこれに相当します。
一方、(2) による分散方法は近年新しく見出されたものであり、ポリカルボン酸がこの分散機構を用いた分散剤です。静電気的な反発を利用するものと比較して、粒子濃度の高い系(低水比)に於いて、その効果を発揮することが特徴です。

図-2.分散機構の違いによる粒子の分散状態

図-3.ポリカル系分散の基本構造

流動化剤としての活用~粉体製剤「レオパック」の溶解性

上記ポリカルボン酸系分散剤は良好なコンクリート流動化剤として期待できますが、製剤化にあたっては、従来の液体系ではシビアな投入管理のための専門技術者が必要でした。そこで、誰でも簡単に、定量的に使用できる「粉体パック型」流動化剤に着目いたしました。
「粉体パック型」製剤化の課題としては、

  1. 投入後短時間で解砕・分散剤溶解すること
  2. 通常時にパックが溶解しないこと

が考えられます。種々検討した結果、

  1. 特定の無機粉体で表面被覆することにより粉体の溶解性向上(図-4)
  2. パック剤としてカルボキシメチルセルロースを併用することによりコンクリート分散液のpHで選択的に解砕(図-5)

することを見出しました。
勿論、流動化剤の性能として、高性能AE減水剤と同等の減水効果やスランプ保持効果を発現します。「簡単・軽量・優れた流動化効果」を実感下さい。

図-4.表面被覆粉体型分散剤とその溶解性

図-5.アルカリ解砕紙と溶解性のpH依存性

アルカリ解砕紙に用いられているバインダー